出張で上司の運転するトラックに乗って、高速道路を利用する。高速道路にはたくさんの死体がある。
移動スピードが速いので見間違いの可能性は多少あります。
狸や、カラス、小さい鳥。自動車のタイヤに轢かれてしまったようなもの。もしくは窓ガラスに衝突したようなもの。
窓ガラスには飛んでいる虫がぶつかって死ぬ。
わたしは鳥のフンがついているのだと思った。上司に「鳥のフン多いですね、当たる面積が広いからですかね?」と聞いた。
上司は「ちゃうねん、それ飛んでる虫やねん。トラックのスピードが速いからぶつかったらな、潰れてまうねん。」とこたえてくれた。
わたしは人間だからここまで長く生きることができているのかもしれない。
そんなふうに考えてしまう。
人間は人間には優しい。
譲り合ったり、助け合ったりできる。
他の動物にも、もちろん優しくないわけではない。
少しぬけているところがある動物は、その優しさにあやかることができない。
わたしは割と間抜けな人間だと思う。ぼんやりと生きている。人間同士だから人間に良くしてもらって、生きることができている。
たぶんわたしが動物だったら、高速道路で轢かれて死ぬだろうし、ぼんやりしていて他の動物に食べられたり飢え死にしたりしているかもしれない。
虫だったら、たぶんご機嫌に鼻歌でも歌いながら空を飛んでいるところでトラックに衝突して死ぬ。
蟹だったら、太陽光気持ちいい〜とか思いながら何も考えれなくなって干からびて死ぬのかな。
人間っていいなって思う。ぼんやりしていても生きていける。
良くも悪くも周りは放っておいてくれない。
人間の死は、人間の普段の生活からは離れた場所に存在する。
そういえば今日は、会社に戻ってから手に止まった蚊を叩いて死なせてしまった。血が出た。