五月の雨の匂いが好きだと思った。雨に濡れた植物の匂いなのかもしれない。香水では作れない匂い。帰り道、ずっと嗅いでいたいと思いながら歩いていた。バスが通り過ぎて行って良い匂いだと思った匂いは掻き消された。帰り道、同じ匂いを嗅げないかなと思って鼻に意識を集中していたけれど同じ匂いは嗅げなかった。
人にこの匂いのことを言いたいと思った。けれどわたしは匂いに関する語彙を知らなすぎる。雨の匂いという言ってもたぶん１００％は伝わらない。植物の匂いも全ての植物が同じ匂いではないだろう。一瞬だけだったから誰かの香水の可能性だってある。取り残された洗濯物の柔軟剤の香りかもしれない。帰りのあの一瞬だけ香った匂いは何だったんだろう。好きな匂いだった。何となく懐かしい気持ちになる匂いだった。
マスクを外して鼻を覚まして帰ったらいろんな匂いが嗅げて新鮮な気持ちになった。
歯医者の前の匂い。苺のビニールハウスの前を通る時の匂い。人の家の換気扇から流れてくるお風呂の匂い。
匂いを伝えるってむずかしいと思った。この世に匂いってどれくらいあるんだろ。逆に匂いを伝えられてわかる！ってなることもあんまりないな。臭い匂いの方が伝えやすいし伝わりやすい。
語彙力、、、みたいな言葉に逃げたくないがわたしの語彙では良い匂いをうまく伝えれない。ああ、語彙力、、、ってやつです。
柔軟剤の匂いはいつもいまいちピンとこない。たまに失敗して我慢しながら早く減るように大量に使っていた。今はもう柔軟剤無しで大丈夫な洗剤に変えたのでそういうストレスは減った。外で乾かすと日当たりが悪かったり隣の煙草の匂いで臭くなる気がしてプラズマクラスターの世話になっている。買ってよかった。
フローラルとかローズとかシトラスとか、どの匂いでも人によって解釈は違っている気がする。いつも緑色のパッケージやローズマリーとか植物の香りって書いてあるものを選ぶ。わたしはそういう匂いが好きなので緑を選べば後悔は少ない。○○の香りって書かれてる柔軟剤でもメーカーによって違っているように思う。
明日の帰り道も雨が降ってたら良いなと思った。一瞬の匂いをうまく伝える方法が言葉以外にあったら知りたい。
